イギリスにおけるダンスの組織面の概要と位置づけ
◆イギリスダンスの組織面の概要
Founding organizations(全国24団体)
助成団体。多くがThe Department for 文化(Culture)メディア(Media)スポーツ(Sport)に関する事項の政府の決定機関(DCMS)から支援を受け活動を行っている。このDCMSからの資金や宝くじの収益金が助成金のもととなっている。他の芸術・スポーツ・科学技術分野にも助成を行っている。イギリス全土にわたる各助成団体間ではネットワーク化が進んでいる。ダンスに対する助成は、主に次のものを対象として行われている。
● Individuals (個々のカンパニーやアーティストの活動支援)
● Organizations (アートに関する活動をしている組織に対する支援)
● National touring (いくつかのイギリス国内の地方に渡るツアー活動に対する支援)
Dance Agencies
プロのダンスアーティストと、コミュニティーグループや学校との間に入り、コーディネーターとしての役割を担う。企画、マネージメントなどを行う。具体的には、必要なアドバイスや情報の提供、立ち上がったばかりのダンスグループのマネージメント、若者向けの定期的なダンス活動の提供などである。多くは地域の自治体や上記のファンデーションから資金提供を受けているが、その他にも慈善団体やスポンサーから資金を集めて活動を行っている。
-National dance agencies(各州にほぼ1機関ずつ。10団体)
1990 年初頭、全国的なネットワークを持つ助成団体の一つ、アート・カウンシルが下部組織として設立した各地域のダンスの拠点。主に地方に潜在しているダンスアーティストを育て、彼らの国内外への進出の手助けをするための環境が整えられており、各州の人々がプロのダンスアーティストを目指すための拠点となっている。様々なレベルのダンスレッスンや定期的な公演なども行っている。また地元の他のオーガナイザーやプロデューサーと金銭的・企画的に協力し合い、コミュニティー向けのレッスンや公演を実現するなど、属する地域社会とダンスとの橋掛かり的役割を果たしている。イギリスの地方都市におけるダンスムーブメントの中心的担い手。
– Organizations(64団体)
上記National Dance Agencies以外に、各地で全国的な企画を行っている団体。
企画対象を特化させた団体が多い。(※Foundation for Community Dance はここに含まれる。)
ラバンセンターなどのプロのダンサー/アーティストを育成することを主眼とした教育組織。卒業により、ダンサー/アーティストとしてのレベルを証明する国家公認の資格が享受され、キャリアとして認定される。ダンス技術的なことばかりでなく、理学的な事柄も教授している。ダンスに関する書物・映像などをそろえた図書室なども備えているところが多い。
◆イギリスにおけるダンスの位置づけ
【産業社会の変化によって生み出されたダンスの重要性】
≪the place Chistopher Thomson 2004年9月佐東によるインタビューより抜粋・訳JCDN≫
イギリスは産業革命以来、長い間世界産業のトップを走ってきた。しかし 20 世紀にはいると、世界の工場としてアジア諸国が台頭し、また技術面でも日本やアメリカなどの国が急成長してきた。こうした中で必然的にイギリスは、自国の多くの産業を失うこととなった。イギリスとしては、それまでの鉄鋼業などの工業的な産業に変わる新たな産業を確立する必要に迫られた。そこで生まれたのが、“ニューエコノミー”と呼ばれるものであった。ニューエコノミーとは、知識や創造性が求められる知的産業の分野である。この“ニューエコノミー”の社会への出現により、教育の現場では、個人の創造性を伸ばし、クリエイティビティーな人間を育てることが重要とされるようになった。そこで、現場に求められたのがアーティスト達であり、もちろん、ダンスアーティストもその一つであったわけである。
また、同時にこれまでのような確固とした産業が失われたことにより、20 世紀のイギリスでは職業的な安定も保証されなくなってきた。このような“移ろいやすい”現代社会に対応するためには、自分が直面する新たな事柄をひたすら学び続けることが必要となってきた。こうした状況下で、ダンスをはじめとするアートの力は、あらゆる分野を学ぶに当たって必須となる“創造力”を養うものとして、いよいよ求められ始めたのである。
産業的、また経済的な社会の変化がアートを必要とし、ダンスもそのひとつとしてイギリス社会の中に深く根付くことになったのである。
2007年6月24日〜30日
JCDN
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