インタビュー Christopher Thomson氏
英国のコミュニティダンス視察 02 『The Place』
インタビュー Christopher Thomson氏
(Director of Learning and Access, The Place)
〔視察内容〕施設見学の後、活動内容とプログラムについて説明を受ける
Placeは大きな組織だが、特にアウトリーチ・教育の部分に焦点をあてて活動している。
基本的な5つのプロデューシング部門がある。
基本的な5つのプロデューシング部門がある。
1.劇場 2.学校&教育 3.アーティスト育成・開発
4.リチャード・アルストン ダンスカンパニー 5.ラーニング・アクセス
4.リチャード・アルストン ダンスカンパニー 5.ラーニング・アクセス
この5つの各々が公演を開催したり、開発事業を行う等、それぞれが協力して活動している。
■ プレイスの施設案内ツアー
(施設を回りながら説明を受ける。)
プレイスの古い方の建物は、元軍の鼓笛隊などの芸術訓練所として使用されていた建物で、アーティスト・ライフルという劇場、教育、アーティスト開発部分として使用している。新たに2000年に建てられた建物は、学校・スタジオとして使用。数百人の若者が週末や夕方クラスに通っている。1週間に大人のクラスが23、子どもクラスが14-16、夜8時から10時までは資格をとるクラスが行なわれている。
アーティスト開発については、アーティストの技術的な部分の向上はもちろんのこと、どうすればアーティストが生計を立てられるようになるか、にも取り組んでいる。クリエイションの為にスタジオを開放したり、作品についてアドバイスをするなど、創造活動についても積極的な取組みを行なっている。
金銭的なサポートしてくれるスポンサーに対しては、充実したプログラム実施日に、実際にスタジオに見学に来てもらうようにしている。どのような活動がプレイスで行なわれているか、ということをスポンサー自らの目で見てもらい、より深いプレイスの活動に対する理解を促す努力をおしまない。
新しい建物のスペースを使って3つの目的を果たすプログラムを立案している
①振付学校 ②プロの振付家用 ③コミュニティ教育
合 計で、1500時間のクラスを行なっている。政府がプロ対象でなくコミュニティへのアートの推進を奨励しているので、この新しい建物もコミュニティを対象 にしたプログラムを行うことで、資金援助を得ている。例えば、月曜は子どもたちが放課後に来てダンスを行なえるよう開放したり、10人くらいの中規模のレ ジデンシー・ダンスカンパニーが使用するなど、様々な種類の使用方法が実施されている。アーティスト開発のクラスでは、カンパニー、一般のクラス、土曜は 子どもの為にそれぞれ使用されている。又、レジデンスカンパニーが一般の人や子どもに教えたり、日曜はカンパニーメンバーが才能ある生徒にクラスを開いた り、人材育成としてのクラスも多く行なっている。
プレイスのレジデント カンパニー
カンパニーの主宰者リチャード・アルストンはプレイスのアーティスティック・ディレクターで、取締職の立場。彼にお金を払ってカンパニーをつくってもらった 異例な事。任期はないのでカンパニーは変わらない。ユースダンスカンパニーに作品を振付けるなど、プレイスでのプログラムと連動しての活動も行なっている。
* プレイスは、このように広い意味で、一般の人からプロのアーティストまで広い幅で、協力体制で活動を行っているのが素晴らしいところ。
エイミー・ブラウスさんは、プレイスの生徒だったが、カンパニーに入り、ワークショップでの指導者となっている人物。先生を助ける為の映像・ディスカッ ションなどの教材としてDVDを製作。DVDは、作品を全編通して鑑賞/リハーサル/振付家が作品の意図などを語る、等それぞれのコンテンツがある。学校 がダンスを授業で取り入れる為に、教育者用にサポートするという意味でこのようなものを製作している。また同時に我々のカンパニーに対するオーディエンス 開発という一環でもある。
■シアタープログラムについて
劇場のプレゼン/アーティストの育成・教育/日本のアーティストの招聘
2006年まではシアター部門とアーティスト開発部門に分かれていたが、06年1月に合併してひとつになった。アーティストをプロとして育成し支える。そのあかつきには実際に劇場で公演してもらおうという流れをつくろうと思った。
■ プレイスの教育活動に関して-教育部門-
イギリスではオーソドックスなプログラム。ダンスを皆に認識してもらう為 には、学校の中でカリキュラムとして取り入れられなくてはならない。そうなると試験が必要になってくる。そこで試験勉強用に、振付家や作品について学べる WEBサイトを製作。15歳から18歳を対象としている。また、試験勉強の為に実際にワークショップを行い、レパートリーやクリエイティビティを学び、劇場でパフォーマンスを鑑賞するというプログラムもある。国全体のプログラムとして、多くのカンパニーが同じようなモデルケースを使っている。学校で半日~1日テクニックのワークショップ/クリエイティブ プロセスのカリキュラムを組む。作品について学び、語り、教育的であるが、皆で楽しめるワークショップになっている。
イギリスではオーソドックスなプログラム。ダンスを皆に認識してもらう為 には、学校の中でカリキュラムとして取り入れられなくてはならない。そうなると試験が必要になってくる。そこで試験勉強用に、振付家や作品について学べる WEBサイトを製作。15歳から18歳を対象としている。また、試験勉強の為に実際にワークショップを行い、レパートリーやクリエイティビティを学び、劇場でパフォーマンスを鑑賞するというプログラムもある。国全体のプログラムとして、多くのカンパニーが同じようなモデルケースを使っている。学校で半日~1日テクニックのワークショップ/クリエイティブ プロセスのカリキュラムを組む。作品について学び、語り、教育的であるが、皆で楽しめるワークショップになっている。
エイミー・ブラウスさんは、プレイスの生徒だったが、カンパニーに入り、ワークショップでの指導者となっている人物。先生を助ける為の映像・ディスカッ ションなどの教材としてDVDを製作。DVDは、作品を全編通して鑑賞/リハーサル/振付家が作品の意図などを語る、等それぞれのコンテンツがある。学校 がダンスを授業で取り入れる為に、教育者用にサポートするという意味でこのようなものを製作している。また同時に我々のカンパニーに対するオーディエンス 開発という一環でもある。
○理科のプログラム
ダンスが地理や理科を学ぶ助けになる、ということを政府に提言する為にそのリサーチを行った。ダンスの要素を使って理科を教えるワークショップを、教師 を対象に京都と横浜で行なった。動きを取り入れた授業を他の科目でも取り入れていくことを推進し、色々な形のダンスをプロモートしようとしている。正式な教育にダンスが取り入れられたことで、ダンスの振興が広まったと言える。ダンサーとして訓練を受けていない先生達に、シンプルなダンスを教えられるような 教材をつくった。例えば、理科の授業で虹の説明をする時、ダンスの動きを使う。小学校の先生に動くことに自信をもってもらう為、ダンスは怖くないのだよ、 ということを知ってもらうワークショップを行なっている。WEBサイトから教材を買うことができる。
ダンスが地理や理科を学ぶ助けになる、ということを政府に提言する為にそのリサーチを行った。ダンスの要素を使って理科を教えるワークショップを、教師 を対象に京都と横浜で行なった。動きを取り入れた授業を他の科目でも取り入れていくことを推進し、色々な形のダンスをプロモートしようとしている。正式な教育にダンスが取り入れられたことで、ダンスの振興が広まったと言える。ダンサーとして訓練を受けていない先生達に、シンプルなダンスを教えられるような 教材をつくった。例えば、理科の授業で虹の説明をする時、ダンスの動きを使う。小学校の先生に動くことに自信をもってもらう為、ダンスは怖くないのだよ、 ということを知ってもらうワークショップを行なっている。WEBサイトから教材を買うことができる。
■シアタープログラムについて
インタビュー Helen Shute女史/ Programming Associate
劇場のプレゼン/アーティストの育成・教育/日本のアーティストの招聘
2006年まではシアター部門とアーティスト開発部門に分かれていたが、06年1月に合併してひとつになった。アーティストをプロとして育成し支える。そのあかつきには実際に劇場で公演してもらおうという流れをつくろうと思った。
レゾルーション
毎 年1月と2月に6週間に渡り19年間ずっと継続して行っている。日に3つのプレゼン、合計100作品を紹介。対象者は新しい人材、プロとして始めてプレゼ ンをする機会をあたえるということ。ジョン・アシフォードと私が毎日このレゾルーションを観て、コレオドームやプレイス賞に参加してほしいと思う新人に声をかける、言わば登竜門的なプログラム。選考の条件はシンプルで、男女比やどこで教育受けたか、などのバランスで決めている。
コリオドローム
2007 年夏に実施。奇数年に行っている。夏休み期間は学校がないので、クリエイション/リサーチの為に、スタジオをプロに開放することができる。これまでアー ティストに何のプレッシャーもなく、自由にワークしてもらっていた。実験的な作品をつくってもらったり、初めての試みだったり、自由な活動の期間だった が、今年は<タッチウッド>という運が続くようにというゲームから名づけたプログラム名を付け、クリエイション/リサーチの結果を公の前で公演してもらうワークインプログレスの試みを始めた。このタッチウッドの発表を経て、劇場が今後の可能性がありそうな人を探す場としている。今年の試みとして、カナダやイスラエルから国際的な振付家を招聘し、マスタークラスを計画している。
プレイス賞
偶数年に実施。夏の間20カンパニーに15分の作品をつくってもらう。10日間の期間にコンペを行い、観客の投票で1晩1,000ポンドの賞金をつけ、総計 25,000ポンドの賞金を競う。ここで勝利を得た作品は、全国に巡回公演を行なったり、今後プレイスとして発展させていく対象作品となる。賞金はプレイ スのスポンサーから提供。プレイス賞への申込みは、約200件。申込み者はどういうことをやりたいか、アイデアを示すものをスピーチ・美術・絵画などで表 現した3分の映像を送る。その映像を30人のヨーロッパのパートナーに送り、上から40人を選び、選出された者は30分間のプレゼンを言葉・ダンス・映像 などで行なう。その中から最終的に、4名の審査委員により20組を選出する。
フレッシュ
教育部門とシアター部門の協力で、毎年12月に行っている。若いパフォーマーによる1作品10-15分の作品を上演。10代の若者が主な客層。この<フレッシュ>で、学校の卒業生がプロとして初めてプレゼンを行なうことになる。
ターニング ワールド
来年は日本にフォーカスを置いている。新しい振付家をイギリスに紹介するというのが目的。日本では知られているが、国際的にはまだ知られていないアーティス トをイギリスで紹介するのがこの主目的。皆さん是非、どういうアーティストが良いか紹介してほしい。今後皆様と引き続きEmailなどでやりとりして、ど ういう方法があるか(予算+人選を含め)探っていきたいと思う。イギリスから日本にも紹介したいと思っている。
Q:どれくらいのクラスのアーティストを招聘したいか?
A:まずは作品ですね。いい作品をつくっているアーティストを呼びたい。プレイスが興味を持てる作家ということになる。イギリス内の振付家の場合は、新進気鋭の 若手をプロモート、海外からのアーティストを招聘する場合は、今後国際的に活動していくであろう可能性が見える人をターゲットにしている。
■ 学校部門について
インタビュー Veronica Lewis女史 MBE Director/学校部門ディレクター
プ レイスは自分にとって素晴らしいところ。昔私は、学校をさぼって遊びにきていた。音楽一家に育ち音楽には恵まれた環境があったが、私はダンスをやりたかっ た。1950年代60年代というのはイギリスのダンス暗黒の時代といわれている。ダンスは、体育の一環としてスポーツという捉え方。音楽とか美術は素晴らしい環境が既に確立されていたが、ダンスは認められていなかった。だからダンスに対する皆の考えを変えたかった。やはりアーティストであれば、自分がやっ ているジャンルのアートを人々と共有したい、という責務を追っているのではないか。若者、一般の人、年配者、ダンサーでない人、誰もがダンスを共有しなけ ればならないと信じています。私は40年かけてクリスと一緒に、最高の質のダンスを、最高のかたちでレベルを保ちながら人々と共有できるように努めてきました。
30 年前イギリスにおいては新しい運動が生まれまして、教育の場におけるダンスの教授法、そしてトップレベルにおけるダンサーの訓練が変わった。今は既にシス テムが確立され国中の若い人に、ダンス教育を与えられるようになった。自分の家から2時間以内に、最高のダンス教育が受けら場所をつくらなければいけない、という政府の方針ができた。プレイスはその主導権を握っていると思う。実際的にプレイスでは、5歳から誰でもクラスを受けることができる。地元の子供 たちに対して、また10歳以上は南部全体から子どもたちがオーディションを受けてプロジェクトに参加できる。一部の大人や子どもにとっては、ダンスというのは娯楽の一環であると思っている、そういう考え方はそれでかまわない。クラスに来るかもしれないし、劇場に来るかもしれない、そういうことに繋がるから です。ですから、この部分の層に関しては年齢やテクニックは問いません。
それ以外の子どもや大人にとって、ダンスがもっと人生の中で重要な活動として捉えている人にとっては、集中的に訓練する場をプレイスは提供しなければいけない。10歳以上の子は日曜にここで訓練を受け、自分の家でダンス教師から訓練を受ける。日曜、クリスマス、イースターなどの休暇には集中講座もある。テク ニックバレエ、コンテンポラリーダンス、他の創作、レパートリーも習う。身体に損傷をきたさない為に専門家のケアもある。また個人個人にアドバイス・宿題 など与える。プレイスで訓練している限りはいろんなリソースがあり、人材も豊富。カンパニーやバレエ・コンセンバトワールの先生に教えてもらうなど、本当 のプロのダンサーたちに触れる機会がある。アーティストにとって、自分のテクニックを共有するという技能、アーティスト訓練を行なう。10歳から54.5 歳までどんな人でもアートに関わるように心がけている。
プレイスというのは、例えて言うならば大きな木のようなもの。根から栄養をくみ上げ、幹の部分はアーティスト。そこから先の葉、花はひとつづつ違う形になっている木を想像してください
幹 の部分のアーティストは、3年間のコンセンバトワールを卒業するとMBEがとれるようになっている。生徒はイタリア、韓国、フィンランド、アメリカ、ハワ イ、イタリアなど各国から来ている。年間40人しかとらないことになっているが、申しこみはそれに対し1300人。卒業後、修士課程、博士課程もある。若 いダンサーにとっては、資格といういものは、どうでも良いが両親にとっては必要だし取ってほしいと思っている。
最初の話にもどると、プレイスの中で一番大切なのは何かと言うと、我々が生活している文化の中でダンスというものと向き合って、一緒に生きている人たち=ダンサーとその周りの人の生活を豊かにすること。その為にはアーティストを訓練しなければならない。アートに対してはっきりとモノが言える人たちに育ててい くこと。そしてそのアーティストが、自分のアートを皆と共有できるように育てていかなければいけない。アーティストとは、ダンスが上手いこと、他の人に教 えること、他の人との関わり方、これ等に対して雄弁であること。そういう人材を育てなければいけない。
ダンスは雨の日にやる課外活動ではない、我々の子供たちには良いダンスができる機会を与えられるようにしたい。
Q水野:イギリスにはいろいろなダンス学校が多くありますね、有名なラバンセンターも含め。例えば、プレイスとラバンでは、随分雰囲気が違いますが、各学校のオリジナリティはどのように意識されて運営していらっしゃいますか?
A:私たちは、私たちの最善をつくしてやっています。世界には多くのダンス学校が必要なので、各自の生徒が自分にあった学校を選びます。私たち学校は競争相手としてではなく、協力してやっていっています。ラバンとプレイスの違いとして、プレイスとしてはアーティストの環境は小さく留めておきたいと思うから、小規 模にやっている。40人しか生徒を受け入れないのは、それが私たちが考えるアーティストを育てる環境として、一番良い規模だと思うからです。
最も強いところは、子供、若いアーティスト、プロとして活躍しているアーティスト、それぞれが双方向の関係を維持していること。ご覧のようにカフェでは、い ろいろな層のアーティストが同じ空間にいて、刺激しあっています。ただのダンス学校ではなく、プレイスは世界で一番素晴らしいところでもあり、時には一番いやなところでもある。それは、学校・劇場・子供の教育と各セクションが共存していかなければならない。もし学校だけだったら自由に私の好きなようにできるけれど、それぞれが、協力共存しているところが素晴らしい、と思うのです。
Q佐東:質問ではないですが、お話しを聞いて日本はまさにダンス暗黒の時代だと思うので、これを機会に変えていきたいと思います。
A:自分たちもまだまだ完璧だとは思っていません。これから、学ぶことがたくさんあります。
Q三上:先ほどおっしゃったように、各セクションが交渉をして協働してやっていけるようなアートアドミニスレーターをどう育てていますか?
A:私はアドミニスレーターとダンサーというように分けて考えていない。言えることは、リーダーになる為にはダンスに対して情熱を燃やしている人材でなくてはいけないし、ダンスが人の人生をいかに豊かにするか、ということを本当に信じている人でなくてはいけない。つまりは、クリスさんも私も、ダンス畑でずっと 育ってきた。イギリスにおいてダンスのリーダーは皆ダンサーです。アドミニスレーターの人間としてできることは、若い人に素晴らしいダンスをみせること。
Aクリス:ダ ンスの訓練を大学で受ける若い人が沢山いるが、卒業後、振付家としては、続けていかないと思った場合、つまり、自分の振付家としての才能はここまで、と思った場合ですね。そういう人たちは、ダンスのことを理解しているし、情熱はあるし、アドミに転換することもある。この人たちが私たちの貢献者になれると思っています。
クリスさんへの質問
Q佐東:1週間いろいろなコミュニティダンス(CD)の知識を得ることができたと思いますが、最終的に日本でCDを紹介したいと思うが、具体的にどういうカンパニーが良いか相談したい。
Aクリス:ロールモデルになるような人に来日してもらう。イギリスと日本の文化、教育の違いはあるが、CDの模範となるようなアーティストから刺激を受けることは重要なこと。25-40年かかるプロセスが縮まるかもしれない。
Q水野: 日本においてアーティストがCDの根源的な意味や、ダンスの活動を通じて社会に還元していきたいと思う意識を持たす為に、要はアーティストが個々の作品を 創ることだけでなく、世界観や行動を広げる意志を持つようにする為にどうすればよいか?私たちオーガナイザーがすべきことは何か?
Aクリス: それは20年、25年かかること。アーティスト自身の自分に対する見方を変えていかなければいけない、非常に複雑なプロセスである。そのプロセスとは、今 ダンスの世界は広がっていて、ダンスはダンサーだけのものではなく、子どもや高齢者、障害所も含めて捉えなければいけない。ダンスの世界自体が大きくなっているということを理解しなくてはいけない。ダンスを教えるということは、ダンスが上手いから教えるのではなく、自分自身のパフォーマーが豊かになり、自分に還元されるということを叩きこまなくてはいけない。若い人、子どもたちと一緒に仕事をすることは、教えれば結果的に経済的なチャンスに恵まれ、お金が入るということになる。また、振付家として多くの人と仕事をするという事は、作品を創る上で実験的な試みができる大きな機会になるということ、公演の期間 だけでなく、年間を通じてダンサーとして活動できる機会を得ることに繋がっていく、こういったことを叩き込んでいくプロセスです。
先 ほど25年といいましたが実際は40年くらいかかっているかもしれない。大事なのはロールモデル模範になるような、ああいう人がいるから、ああいう人にな りたい、というような憧れの対象となる人の存在、その必要性が大事。又、25年前CDの分野における訓練施設が多くできたことで、状況に変化をもたらした。施設を増やすということも、きっかけになるかもしれない。
Q大野:日本の各地域の公立ホールは芸術監督が不在のところがあるが、そのような公共ホールが、プレイスが行っているようなCDを普及していく為の方法論は?どういった役割が果たせるか?プレイスはどういった役割をしているのか?
Aクリス: プレイスはひとつのエージェンシーの例。いろんな人の為にいろんなことを提供しています。子供や振付家の為のクラス、作品創作クラス、など。各地域のホー ルはスペースがあります。ダンスはスペースが必要です。そういった意味で小さなエージェントとして、ダンスの振興に役立てるのでは?その為にには相応しい 公演をやらなくてはいけないし、相応しいクラスをしなければいけない。この相応しいとは何か?と言いますと、観客が何を欲しているか、観客がどういった形 で参加を望んでいるのか?という声に耳を傾けること。そうすれば、公共ホールはエージェンシーになれるのではないか。どんなスペースでもダンスに相応しい。ダンスは皆のものであるということが重要です。
Aヴェロニカ:一番大切なことは参加する人達、観る人達が何に興味があって、何をやりたいのかということ。一方で私たちが私たちとしてやりたいこと、興味のあることがあり、この2つを擦り合わせることで、何か新しいことが生み出せるのではないか。
ごく最近ですがわが校の3年生ですが、高齢者の集会所でパフォーマンスを行い喝采を受けた。今度は高齢者が立ち上がってダンスを披露してくれた。この双方向に感銘を受けました。
Aクリス:20-25 年の経験を通じて大変重要だと思うのは、皆さんは我々が25年前歩んできた道を歩み始めていると思います。アーティスティック・ディレクターを育てることは可能です。日本でも若い人で訓練を受けている人、CDの重要性を理解してくれる人は必ずいると思う。CD出身で今は国際的にカリスマ的な存在になったウエィン・マクレガーさんのような人もいます。彼が高いテクニックを持っているから、人々が耳を傾けるようになった。こういった可能性を秘めている人材を育成して、アーティスティック・ディレクターを育てていくような働きかたをすることは可能だと思います。
Q井手上:今、日本では学力重視の教育方針が先行し、アートを教育の中に入れていくことが難しい状況です。その中で私たちがしなければいけないことは何でしょうか?
Aクリス:今言えることは、我々皆が同じ問題に直面していて、万能薬はない、ということです。
しかし、小さく始めて考えは大きく持つことが大事。いずれはこうしたい、という野心を持つこと。
活動を皆に認めてもらい、将来的にグローバルに世界的に広げていきたい、という視点を念頭に持ちながら、まずは小さいところから活動することが大事。
政府に芸術に対してお金を出してもらおうと思ったら、国民が芸術を欲しているのだ、ということを政府に見せつけないといけない、それしかない。例えば、経済的効果がありますから、とか、倫理的に大事ですから、などは事実ですが、そういう言い方では難しいです。国民が心の底から芸術を欲している、ということを 認識させて初めて政府のお金が出る、ということです。もちろん、国民が欲しているから、という言い方は政治的圧力になる分、それに対する証拠や数字が必要 になってきます。
また同時に、いろいろなアプローチでいろいろな言い方で、説得していくことが大事。アートは経済効果がありますよ、とか、個人の学習能力にも良いですよ、とか、保険健康に役立ちます、楽しいから、創造力を培うのに良いから、など。いろいろな言い方で伝えていくことが大事。
それから組織として、例えばJCDNのような組織としての機能で、“ダンスが素晴らしい”という働きかけを政府に話をしていくこと、働きかけをすることが大 事。アーティストは自分たちの声を発することができないので、それをまとめるような組織としての役割を担うこと。大きな括りで、“ダンス”の世界として、 ひとつのメーッセージを声として皆でシンプルにして伝えていくこと。いろいろなダンスの種類があるが、政府に訴えかける場合、細分化(バレエ、フラメン コ、ハワイアン、モダンなど)しないで、大きくダンスとして声をひとつにまとめる方が効果的です。
[視察日]2007年6月24日~30日
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JCDNはダンスの環境を創っていくとともに、日本における芸術のあり方を変革していく運動体=アーツサービスオーガニゼーションを目指すものです。その為にJCDNは、NPO(非営利組織)として設立し、社会とダンスを結ぶ接着剤として機能していきたいと思います。
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2014年7月8日